ED治療薬の効果と特徴|3種類の処方薬を比較

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ED治療薬の効果と特徴|3種類の処方薬を比較

薬の比較

現在日本ではシルデナフィル(バイアグラ)、バルデナフィル(レビトラ)、タダラフィル(シアリス)の3つのED治療薬が処方されています。この3薬は根本的な作用は同一ですが、効き方や使い勝手、副作用などが若干異なります。特徴の違いを知って自分に合った治療薬を選択することは、性生活の質を向上させるために重要なポイントです。
ED治療薬の基本的な作用について解説し、3つの治療薬の特徴を比較しながら紹介していきます。

勃起の仕組みとED治療薬の作用

ED治療薬を適切に活用していくために、まずは勃起の基本的な仕組みとED治療薬に共通する作用の特徴を理解しておきましょう。

勃起は陰茎海綿体にあるアクセルとブレーキで調整される

海綿体

陰茎の大部分は海綿体という組織でできています。海綿体は血管と筋肉でできたスポンジ状の組織で、普段はスポンジをぎゅっとしぼったような硬い状態になっています。
性的な興奮が陰茎に伝わると、海綿体に血液を送り込む「蛇口」が開かれ、海綿体の筋肉は緩んで、スポンジに液体が吸い込むようにして大量の血液が流入します。流入した血液の圧力で海綿体が膨張すると、陰茎は大きく硬直した状態になります。これが勃起という現象です。
海綿体のスポンジの力がゆるむのは、cGMPという酵素の働きによるものです。性的な興奮によって海綿体の組織にcGMPが増え、その働きで筋肉が弛緩し、血液が流れ込んで陰茎が膨張します。cGMPは勃起の「アクセル」に相当するわけです。
アクセル(cGMP)しか存在しなかったら、勃起は永久に続くことになってしまいますが、海綿体には「ブレーキ」に相当する酵素(PDE5)も存在しています。cGMPはPDE5によって徐々に分解されていきます。この2つの酵素の「綱引き」によって適度な勃起状態が保たれ、性的興奮が去れば勃起が収まる仕組みになっているのです(※1)。

ED治療薬はブレーキ(PDE5酵素)の効きを抑える

ED治療薬(シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィル)はPDE5の働きを抑える作用を持つ「PDE5阻害薬」です。
EDになると、何らかの要因(血管や神経、男性ホルモンの不具合、心理的な不安やうつ症状など)により勃起のアクセルが鈍ったり、効きにくくなったりします。PDE5阻害薬を服用するとブレーキの作用が弱まるので、その分だけアクセルの効き目が回復します。これによりEDの治療効果が現れるのです(※2)。

ED治療薬は性交の度に服用。性的興奮を促す効果はない

ED治療薬はPDE5の自然な働きを阻害し、弱まっている勃起力を少しでも有効活用しようとする薬です。したがって、EDの原因そのものを取り除いて根本治療を行うわけではありません。ただし、ED治療薬によって勃起力が回復すれば心理的な要因も改善され、薬の量や服薬の頻度を減らしたりできる場合があります(※3)。
また、ED治療薬には性的興奮を促す効果(いわゆる「催淫」効果)はなく、性的刺激が加わらなければ服用しても勃起することはありません(※3)。ED治療薬は性生活を縁の下で支えるような存在だと言えるでしょう。

ED治療薬は保険適用外。しかし通販・個人輸入は危険

ED治療薬を利用するには医師による処方が必要です。ED治療は保険外診療(自由診療)であるため、一般的に治療費は高額です。治療薬も1回分につき1,000円前後~1,700円程度となっています(※4)。
インターネット通販(個人輸入代行)サイトでは安価なED治療薬が売られていますが、偽造薬が混じっているなどのリスクがあります。医薬品副作⽤被害救済制度(重篤な副作用が発生した場合に医療費や年金が給付される制度)の対象にもなりません。

ED治療薬の比較

シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルの3薬は根本的な作用は共通していますが、作用時間や食事の影響などに違いがあります。

シルデナフィル(バイアグラ)|最も歴史があるED治療薬

シルデナフィルはED治療薬として最初に認可された有効成分で、バイアグラという商品名で発売されました。現在では数社からジェネリックが出ており、手頃な価格で利用できるのがメリットのひとつです。
シルデナフィルは性交の1時間前に服用することとされています(※5)。服用から平均して1時間弱で血中の薬剤濃度が最も高くなるという研究データがあるためです。ただし薬が効き始める時間はもっと早い場合があります。服用から4時間程度で効果を失います。次の服用までに24時間以上あけることが必要です。
食事の直後に服用すると薬の吸収が遅れ、効果が薄れる場合があります(※4)。なるべく空腹時に服用することが大切です。

バルデナフィル(レビトラ)|即効性が期待できる場合も

バルデナフィルはシルデナフィルに次いで認可された有効成分で、レビトラという商品名で発売されました。まだ日本ではジェネリックが出ていません。
シルデナフィルと同様に1日1回まで(前回から24時間以上あけて)、性交の1時間前に服用します(※6)。血中濃度が最大になる時間帯も同様ですが、より早く効き始めるというデータもあります(※4)。
ある研究によると、バルデナフィル10mgを服用後10分で21%の人が勃起に成功しています(4回試みたうちで1回以上成功した場合を「成功」としています)。一方、シルデナフィル100mg(国内未承認)の場合は服用後14分で34.8%の人が成功しています(ただし8回中1回以上を「成功」と定義)。したがって、バルデナフィルのほうが若干即効性にすぐれていると言えるでしょう。
バルデナフィルも4時間程度で効果を失います。普通の食事は影響がないとされますが、脂っこい(高脂肪の)食事を食べた後だと吸収が遅れて効果が薄れる場合があります(※4)。

タダラフィル(シアリス)|作用時間が長いのが特徴

タダラフィルは現在のところ最も新しく認可された有効成分で、シアリスという商品名で発売されました。今年(2020年)に入り数社からジェネリックが発売され、今後は手頃な価格で利用できるようになっていくと思われます。
タダラフィルは作用時間の面で他の2つと大きく異なります。血中濃度が最大(効き目が最大)になるのは2時間後くらいで、しかも1日半(36時間)程度は作用が続きます(※4)。添付文書などでは性交の1時間前に服用とされています(※7)が、実際にはもっと前に服用していても効果が期待できます。
シデナフィルやバルデナフィルはある程度正確に性交の時間を見計らう必要がありますが、タダラフィルは予定にかなり幅を持たせることが可能で、余計なプレッシャーがかかりにくいというのが大きな利点です。
また、タダラフィルは食事の影響を受けないとされており、その点でも使いやすい治療薬です(※4)。ただし、グレープフルーツジュースは薬の作用を増幅して副作用を強める危険があります(※7)。

ED治療薬は医師と相談して自分に合ったものを選びましょう

現在日本で認可されている3つのED治療薬は根本的な作用は同一ですが、作用時間や使い勝手、選択できる商品の幅に違いがあります。また、今回は触れるスペースがありませんでしたが副作用にも注意が必要です。
ED治療薬は長期的に使いづけることになる場合が多いため、自分の体と生活スタイルに合ったものを選択することが大切です。医師と十分に相談しながら適切な治療薬を選ぶようにしてください。

リファレンス
※1)国立病院機構京都医療センター 泌尿器科「男性更年期Ⅱ 勃起障害」
https://kyoto.hosp.go.jp/html/guide/
medicalinfo/urology/description03.html

※2)日本薬理学雑誌131、469~477(2008)「新薬紹介総説 勃起不全治療薬 タダラフィル(シアリス®錠 5 mg、10 mg、20 mg)の薬理学的、薬物動態学的特性と臨床試験成績」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/
fpj/131/6/131_6_469/_pdf/-char/ja

※3)日本新薬株式会社 EDケアサポート「ED治療 よくある誤解」
https://www.ed-care-support.jp/
trueed/misunderstand.php

※4)東邦大学医療センター 大森病院リプロダクションセンター(泌尿器科)「ED治療薬の比較」
https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/
omori/repro/patient/sexual_impairment/
comparison.html

※5)くすりのしおり「バイアグラ錠50mg」
http://www.rad-ar.or.jp/siori/
kekka.cgi?n=8881

※6)くすりのしおり「レビトラ錠20mg」
http://www.rad-ar.or.jp/siori/
kekka_plain.cgi?n=11836

※7)くすりのしおり「シアリス錠20mg」
http://www.rad-ar.or.jp/siori/
kekka.cgi?n=15644

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