通販・個人輸入のED治療薬を利用するリスク

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通販・個人輸入のED治療薬を利用するリスク

薬服用

インターネット上にはED治療薬の通販(個人輸入代行)サイトがたくさんあります。こうしたサイトを利用する理由は何と言っても価格の安さでしょう。認可されていない高容量の薬を試したい、EDで診察を受けるのが恥ずかしい、というかたもいるようです。
しかし、ED治療薬の通販にはさまざまなリスクが付きものです。以下に詳しく紹介する通り、通販治療薬の4割以上が偽物だったという調査結果もあります。また、ED治療を提供するクリニックではプライバシーに配慮しながら診療を行うのが通例です。通販サイトを利用する前に、幅広いリスクについて理解し、ED診療に関する誤解も解いておきましょう。

ED治療薬の作用と副作用

ED治療薬がどんな薬かを知っておけば、ED対策を効率よく行え、通販で薬を入手するリスクも明確に把握できます。ここでは治療薬の作用と副作用について簡単にまとめておきます。

ED治療薬の作用

現在医療機関で処方され通販で販売されているED治療薬は「PDE5阻害薬」と呼ばれます。PDE5は陰茎海綿体のなかにある酵素で、勃起を解消させる働きを持ちます。もしPDE5がなかったとすると勃起がいつまでも続くことになりそれはそれで問題です(実はそういう副作用も存在します)。
ED患者は陰茎を膨張させる力が弱まってしまっているため、性的興奮により勃起が始まってもPDE5によってすぐに解消されてしまいます。PDE5阻害薬を服用すればPDE5の働きを妨害でき、結果的に勃起しやすくなる効果が期待できます(※1)。
ただし、治療薬はEDの原因そのものを取り除くわけではないため、性交の度に使用することが必要です。ED治療薬は長期的な利用が求められるため、通販を利用しているといつかは偽造薬に当たる可能性が高いと言えます。

ED治療薬の副作用

PDE5は陰茎以外にも体のあちこちに存在するため、ED治療薬の内服によりさまざまな副作用が出ることがあります。日本性機能学会の「ED診療ガイドライン[第3版]」(※2)をもとにして、副作用を表にまとめておきます。

■PDE5阻害薬でよく見られる副作用と薬剤ごとの頻度

副作用 シルデナフィル

(商品名:バイアグラ)

バルデナフィル

(商品名:レビトラ)

タダラフィル

(商品名:シアリス)

頭痛 12.74% 5.59% 11.30%
ほてり 10.19% 15.66% 3.50%
消化不良 0.64% 0.99% 2.30%
鼻閉 0.00% 2.96% 1.20%
めまい 0.64% 0.44% 0.00%
眼症状 1.91% 1.53% 1.20%
背部痛 0.00% 0.00% 1.90%

■PDE5阻害薬で生じうる重篤な副作用の例

病名 症状
NAION(非動脈炎性前部虚血性視神経症) 突然の視野欠損
突発性難聴 突然の難聴
持続勃起症 勃起が4時間以上持続

■PDE5阻害薬で生じうる重篤な副作用の例

併用不可の薬剤 副作用
硝酸薬 著明な血圧低下
可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬 著明な血圧低下

■PDE5阻害薬の使用や用量が制限される条件の例

  1. 腎機能障害(重度)がある
  2. 肝機能障害(中等度)がある
  3. 65歳以上
  4. CYP3A4阻害、抗HIV薬、抗真菌薬、α遮断薬、不整脈関連薬を使用中

通販ED治療薬のリスク

薬リスク
通販で販売されるED治療薬には偽造薬が混ざっており、副作用を初めとするさまざまなリスクがあります。

4割前後が偽造薬。副作用による重症・死亡例も

製薬企業4社が2009年に行った実態調査(※3)では、国内の通販サイトから取り寄せたED治療薬のうち43.6%が偽造品でした。2016年の再調査(※4)では35.6%に低下しましたが、それでも3分の1以上は偽造品ということになります。
偽造薬は大きく分けて3タイプがあります(※2)。
・薬剤に表示されている成分量と実際の成分量が異なる(成分量が0のものから2倍程度のものまで)
・不純物(タルカムパウダー、塗料、インクなど)が混入
・害のある薬物(アンフェタミン、カフェイン、抗寄生虫薬など)が混入

偽造ED薬を服用した場合のリスク

有効成分が入っていない(または乏しい)偽造薬を利用した場合、問題になるのは経済的損失だけではありません。ED治療薬は効かないと思って治療を諦めたり、いっそう自信を失ってED症状が悪化したりする恐れもあります。
一方、成分量が過剰な薬は副作用のリスクが懸念されます。先ほど表にして挙げた副作用は正規品の治療薬を用いた場合のものであり、過剰な成分を含有した偽造薬であれば副作用のリスクはもっと高くなります。
薬物が混入した偽造薬で実際に重篤な副作用をきたすケースがときどき発生しています。国内では偽造タダラフィルと偽造シルデナフィルに混入されていた血糖降下薬グリベンクラミドにより重篤な低血糖発作をきたした例があり(※2)、海外では死亡例もあります(※3)。

通販薬では医薬品副作⽤被害救済制度を受けられない

正規の処方薬・市販薬を使用して重篤な副作用が生じた場合には、医薬品副作用被害救済制度により給付金を受け取ることができます(ただし請求手続きが必要です)(※5)。
副作用により入院治療を受けた場合には医療費と医療手当、日常生活に差し障りがある障害が残った場合には障害年金、死亡してしまった場合には遺族に年金と一時金などが給付されます。
救済対象となるのは厚生労働省により認可された医薬品を適正な用法・用量で使用した場合に限られます。通販(個人輸入サイト)で購入した薬を服用してどんな副作用が生じても救済されません。

EDの診療は恥ずかしい?

医師の問診
通販でED治療薬を購入するのは医療機関で診療を受けるのが恥ずかしいからという人もいるようです。EDの診療は実際にどのように行われているのでしょうか。
よくある誤解のひとつが、EDの診察では下着を脱がされて性器をいろいろと調べられるというものです。実際にはEDの診療は問診が中心で、血圧測定や血液や尿の検査などが行われることはありますが、下着を脱がされるということはまずありません(※6)。
お薬は外の薬局でもらわなければならないのかと心配しているかたも多いかもしれませんが、プライバシーに配慮して院内処方(医療機関内で受け渡し)にしているところがほとんどです。
医療機関で他の患者と顔を合わせるのが恥ずかしいというかたもいることでしょう。最近ではスマホやタブレットを通した診療(オンライン診療・遠隔診療)を行っているクリニックも増えています。ただし初診時は原則として対面診療となります。

ED対策には長期的な視点が大切

ED治療薬の効果を得るためには性交のたびに服用する必要があります。生活習慣の改善などにより勃起力が回復することもありますが、一方で加齢の影響は進行していくため、用量や頻度を調整しながらED治療薬を長期にわたって利用していくことになるかたが多いことでしょう。
通販で購入できる薬には偽造薬がかなり混じっています(だからこそ相場価格を安く抑えられるわけです)。長期にわたって通販のED治療薬を利用していくことは自分の体を使ったギャンブルのようなものです。取り返しのつかない副作用が生じる恐れがあります。
加齢などにより体が変化すれば効き目や副作用も変わってきます。信頼できる医療機関を利用し、長期的な視点で治療に取り組んでいくことをおすすめします。

リファレンス
※1)国立病院機構京都医療センター 泌尿器科「男性更年期Ⅱ 勃起障害」
https://kyoto.hosp.go.jp/html/guide/
medicalinfo/urology/description03.html

※2)日本性機能学会「ED診療ガイドライン」2018年 52ページ「偽造 PDE5 阻害薬」
https://www.urol.or.jp/lib/files/
other/guideline/26_ed_v3.pdf

※3)ファイザー株式会社、バイエル薬品株式会社、日本新薬株式会社、日本イーライリリー株式会社(2009年)「偽造ED医薬品四社合同調査」
https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/
repro/patient/sexual_impairment/
tjoimi00000014vv-att/tjoimi00000014yk.pdf

※4)ファイザー株式会社、バイエル薬品株式会社、日本新薬株式会社、日本イーライリリー株式会社(2016年)「<偽造ED治療薬4社合同調査結果>依然減らない健康被害へのリスク インターネットで入手したED治療薬の約4割が偽造品」
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/
company/press/2016/2016_11_24_02.html

※5)医薬品医療機器総合機構、医薬品副作用被害救済制度
https://www.pmda.go.jp/kenkouhigai_camp/
※6)日本新薬株式会社 EDケアサポート「ED治療 よくある誤解」
https://www.ed-care-support.jp/
trueed/misunderstand.php

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